From Factory
エドワード7世朝、20世紀初頭に造られた「サロンチェア」「サイドチェア」等と呼ばれる飾りの要素の強い椅子です。
ローズウッドで造られ、彫刻とインレイで当時の贅を極めたデザイン。
ペアで入荷したのですが、1脚だけ背もたれの飾りが1部欠損しておりました。
1脚の入荷であれば反対側の彫刻をカットしてシンメトリーに仕上げても違和感無い程度の小さいパーツですが、飾り椅子ですので強度もさほど神経質になる必要がなく、再生することにしました。
オリジナルの素材は現在日本国内で無垢材の入手が困難な為、アジア産ローズウッドで代用して塗装で調整します。
小さいパーツ故、接着面も小さいので正確な寸法で切り出せないとある程度の強度が保てません。
コンマ数ミリ大きく削り出して押し込むくらいピッタリ納められれば接着強度も出やすくなります。
外周を大まかに切り出してから接着前に残っている左側を手本に同じ様に彫り込んで接着。
このローズウッド、当然解っていて取り組みましたが木材とは思えない硬さです。
針葉樹の様な木目による削り難さは無いものの、とにかく全体が硬い。
さすがKING OF WOOD ローズウッドです。(キングウッドという木材もあるのでややこしいですが今回は触れずにスルーします)
手持ちの工具だけでは刃が立たず、最終的には彫金で使う切削工具まで召喚しました。
彫刻の復元の他、背もたれ、腰回り、前脚のインレイもいくつか欠落していたので補修します。
こちらの素材は象牙では無さそうでしたが細すぎて木材の判定まで至らず。
候補はいくつかありましたが白い木材の代表格、ハードメイプルを細く割いて埋め込みました。
写真では分かり辛いですが、今回パーツを作ったローズウッドは赤の強い紫。
本体側のローズウッドは黒の混じった紫。
木材の色の個性はあまり感じず、全体が黒っぽく塗装されてる為、着色による補修はオークやマホガニーに比べて手数の少ない作業になりました。
通常の接着部の修復、全体の塗装、今回はシートとクッション材の状態が良かった為、張り替えは見送りクリーニングのみ。とひと通り全体をレストアして店頭へ。
飾り飾りと連呼しましたが、これでも椅子ですので座れない訳ではなく、背もたれにガンガン寄り掛かる様な使い方をしなければ普通に使って頂いて差し支えありません。
これだけ立体的な彫刻ですので、寄り掛かるとまず背中が痛いのはご想像の通りです。
藤沢ウェアハウでご覧頂けます。
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